エンジンオーバーホール
ここではエンジンのオーバーホールを行う目安となる時期、そして当店で行っている実際の作業を紹介しながら説明したいと思います。
エンジンオーバーホールの時期とは
エンジンはどんなに大切に扱っても故障する時期がきます。
故障して動かなくなった時からでもオーバーホール(以下OH)はできますが、動かなくなる前にOHすることがベストです。
なぜなら故障することによって例えば部品がエンジン内部で飛散したとしましょう、そのバラバラになった部品は他の正常な部品も傷つけたり壊してしまいます。
壊れるときは走行中です。乗っている人の安全面から考えても壊れる前に直すことが大切です。
では壊れる前のOHに適した時期というのはいつでしょうか。
距離を目安に考える方もいると思いますが、オイル管理やそのほかのメンテナンスで大きく変わるためあまり当てにはなりません。
いくつか目安となる症状を紹介します。※これが全てではありません。
・エンジンからオイルが漏れている。
・エンジンの音が大きい。
・明らかなパワー不足を感じる。
・オイル交換時のオイルの量が少ない。
・振動が大きくなった。
・白煙が出る。
・エンジンからオイルが漏れている
これは漏れている箇所によります。
オイル漏れというのはエンジンオイルが入っていればどこからでも漏れます。
危険なのはシリンダー、シリンダーヘッド、クランクケースからのオイル漏れです。
これらはエンジンを分解しないと直りません。オイルは漏れてから広がりますのでどこから漏れているか見極めることが大切です。
・エンジンの音が大きい
これは正常摩耗による音なのか異常摩耗による音なのか、見極めることが大切です。
タペット音であれば調整すれば消えます。
摺動部のかじりによる音でしたら調整で消えるようなことはありません。
・明らかなパワー不足を感じる
エンジンが消耗すると明らかにパワーが落ちてきます。
しかしこのパワー不足の原因はエンジンだけではありません。
キャブレターの不調、点火の不良など他にも原因があります。
・オイル交換時のオイルの量が少ない。
オイル交換時のオイルが少ないということがあります。
漏れていないのに減るということがよくありますが、これはエンジンの内部でオイル漏れを起こしていると考えるとわかりやすいです。
エンジンの内部でもオイルが潤滑するところ、オイルが入ってはいけないところ、という風に決まっています。
オイルが入ってはいけないところにオイルが入り、ガソリンと同時に燃焼し排気されるということがあります。
これがよく聞く「オイル上がり」「オイル下がり」と呼ばれる症状ですが、目でオイル漏れを確認できないために気付かない場合があります。
どちらも修理にはエンジンの分解が必要になります。
一時的に止めるような添加剤も販売されておりそれによって緩和されますが直ることはありません。
・振動が大きくなった。
これはエンジン内部のクリアランスが適正値よりも広がっている場合に、振動が大きくなることがあります。
エンジンの音の大きさと比例することが多く、必ず分解修理が必要になります。
マフラーの取り付け不良などで振動が大きくなる場合もありますので、見極めが大切です。
・白煙が出る。
白煙というのはオイルが燃えた時にでる煙です。オイルが燃えているということは、オイルの量が少なくなる症状と密接な関係があります。
冬によく出る水蒸気と間違えやすいので、見極めが大切です。
始動時にのみ出る場合や加速時のみ出る場合、アクセル開度を一定時間保った後、全閉したときに出る場合など、様々なパターンがあります。これによって、オイル上がりなのかオイル下がりなのかなど、ある程度は見極めることができます。
エンジンのOHとは
これは実際に当店で行っているSR400のエンジンOH作業です。
全てではありませんが参考にしてください。
まず分解します。
分解しながら部品の消耗などを目で見て確認しています。
手の感覚でいつもと違う場合もありますので、覚えておきます。
部品の点検と計測をします。
目で見て判断できる場合もありますが、ほとんどは計測しないと部品の良否がわかりません。
OHですから、ここでしっかりと計測しないと意味がありません。
ミッションは分解しないとシャフトの状態が分からないことが多い為、分解します。
1速から5速まで各ギアの状態を確認し、消耗している場合は反対側と対で交換します。
例えばドッグの摩耗など、今は大丈夫でも近い将来に交換するような部品は、予防的な観点から交換を提案します。
ミッションを組み立てた後は、スムーズに動くかしっかり確認します。
ボルトを取り外した後のネジ穴は、ネジロック剤が塗布されていたり、腐食によりスムーズにボルトが入らない場合があります。
高トルクで締める場合は、このままでも大丈夫な場合もありますが、低トルクで締める場合は本来とは違ったところで規定トルクに達してしまう場合があります。
これではクランクケースなどは均等に締めることができません。
そこで地味ですが大切な作業としてネジ穴の清掃といった作業があります。
これは専用の工具を使って掃除します。
タップを使う人もいるようですが、タップではネジ穴を掃除しすぎてしまいます。
元穴の形状が変わるようではこれもまた意味がない作業となってしまいます。
ベアリング類、オイルシールの取り付けを行います。
エンジンのなかでもベアリングは非常に大切な部品です。
OHをする場合は再利用はせずに交換する場合が多いです。
シリンダースリーブは状態を見て、計測しどのようにするか相談して決めることが多いです。
乗っていると必ず摩耗する部品です。
安く済まそうとピストンは純正品を使用したいという人がいますが、それは間違いです。
ピストン自体は安価ですが、減ったスリーブを元に戻すためにはスリーブを製作しないといけません。
シリンダーが減ったままピストンとピストンリングだけを新品にしても、クリアランスが大きいのでOHとは言えません。
そこで様々なメーカーからオーバーサイズピストンというものが販売されています。
ピストンの外径が大きい為、現在のスリーブを広げるだけで済みます。
この広げる作業のことを「ボーリング」と呼びます。
シリンダーの内径(ボア)を広げて、外径の大きいピストンを組み、排気量を上げることを「ボアアップ」と呼びます。
OHとボアアップは密接な関係にありますがここでは説明しません。
エンジンのボアアップについてはこちらからどうぞ。
ピストンの値段は純正品と比べて高価ですが、スリーブを作らなくてもよいため、安く済みます。
安価なピストンに高価なスリーブ製作、高価なピストンに安価なボーリング。
結局値段はあまり変わりません。
スリーブとシリンダーの面を出すために面研を行います。
熱などで歪みが生じている場合も同様です。
この面研という作業は、シリンダーの長さが変わるために、削りすぎると圧縮が変わります。
更にバルブタイミングが狂う、バルブクリアランスが狭くなるといったことにもなりますので、慎重に最低限の研磨を行います。
ボーリングや、面研などで内燃機加工をした部品は、超音波洗浄します。
新しいピストンなどの部品も、そこまでは洗浄されていませんのでバリ取りなどを済ませた後、同様に超音波洗浄を行います。
ピストンやカムシャフトなどはそのまま組むこともできますが、WPC処理やDLCなどの処理をしてから組むことで耐久性の向上、フリクションの低減など様々な効果が期待できます。
エンジンの部品はSRの歴史の中で変化しています。
見た目は同じでも材質が違う場合、整備性がよくなった部品など様々です。
様々な年式のSRから良いと思う部品を取り寄せ、組み立てます。
これは専門店ならではの強みです。
年式だけで部品を注文しても、このような組み立て方はできません。
このようにエンジンのOHを行っています。
全ての作業ではありませんが参考にしていただけたらと思います。
エンジンのOHと同時に塗装をすることもできます。
詳しくはエンジン塗装のページをご覧ください。
ブログでも作業を公開しています。
ブログのエンジンのカテゴリーからご覧ください。
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